アパレルの「生産ロット」とは何か? 絹糸屋が解説。
おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。
さて、本日はアパレル生産における「生産ロット」について解説していきます。当店でも様々な商品の生産(OEM生産、オリジナル生産、自社製品の生産)を行っておりますが、その中でお客様から頂くご質問、
・そもそも「生産ロット」って何?
・生産工程ごとに「生産ロット」は違うの?
・技術的なロットと、現場での最適ロットが異なるのはなぜ?
・生産、加工の内容別の最小ロットや最適ロットの目安は?
などについて、京都西陣絹糸屋のWEB番頭・TES(繊維製品品質管理士)が解説いたします。
そもそも「生産ロット」って何?
アパレル製品における「生産ロット」とは、各工程における通常生産時の「最適製造数量」のことです。別途、最小対応可能数量を確認したいときには「最低ロット」「最小ロット」の文言を使用されることを推奨いたします。
細かい工程別のロット名称は次の項目に記載いたします。
生産工程ごとに「生産ロット」は違うの?
アパレル製品ができる工程は、おおまかに言って、
・原料段階
・糸にする段階
・糸から生地にする段階
・生地を染色整理する段階
・染色された生地を最終製品にする段階
の工程が代表的です。(厳密に言えば、前後順番が変わる場合や糸から直接製品になるもございます)
それぞれの工程でのロットを、
・原料ロット
・紡績ロット、製糸ロット、糸染色ロット
・編立ロット、製織ロット
・染色ロット、整理ロット
・縫製ロット
などと言います。
一般的に、原料ロット以下、上から下に向かって生産ロットが徐々に小さくなって(数量が減って)いきます。
技術的なロットと、現場での最適ロットが異なるのはなぜ?
技術的に可能な「最小ロット」と、実際の生産現場ベースでの「最小ロット」「最適ロット」は異なるケースが多いです。
例えば、手袋などに代表される「横編み生産」の場合、糸で2巻き立てのものが多く(※)、技術的な「最小ロット」は糸2巻き分(1kg巻きの場合は2kg)〜となります。
※編み機の種類や商品と糸との太さの相性(適合番手)により異なります。
手袋で言えば、1双(左右各1枚=2枚1組=1双)の重さが仮に30gとすると、2,000g÷30g=66.6666…で、約70双が技術的な最小ロットとなります。
ただ、編み工場としては、70双で生産が終わってしまうと、かなり高い工賃(サンプル単価のような価格設定)を請求しなければ、新規の案件は赤字になってしまいます。糸の準備や編みデータの作成、その後の縫製ロットとの関係などから、最低でも1回200双ぐらいから、ようやく標準的な工賃で利益が出てくるようになります。
このような状況で、技術的な最小ロットと現場ベースでの最小ロット(現実的には採算ラインのロット)が異なることが起こります。
工程別、加工別の最小ロットや最適ロットの目安は?
こちらも大まかな記述にはなりますが、国内生産での手配の場合、
・原料ロット(個人、一般企業には手に負えない量です、、、)
・紡績ロット、製糸ロット(最小で1トン、通常は5トン、10トンなどのトン単位です)
・編立ロット、製織ロット(最小で1反、通常10反〜が最適ロットです※1反は約50m標準)
・生地整理、染色ロット(最小で1反、通常6反以上からが最適ロットです)
・縫製ロット(業界やアイテムによってまちまちですが、最小で50点〜、100点〜、通常300点〜が最適ロットです)
のようなイメージになります。
具体的には・・・(問い合わせの多いアイテム別)
当店によくお問い合わせいただく商品で具体的に言いますと、
①腹巻(丸編み)の場合
・原料、紡績はあきらめて頂いて、、、
・糸種の選定や編み設計の変更からの場合は「丸編みの編立ロット」で、10反〜。
・すでにある生地をオリジナル染色する場合は「染色ロット」で、3反、6反〜。
・すでに染まっている生地のサイズや縫製仕様を変更する場合は「縫製ロット」で、100点、300点〜。
②手袋(横編み品)の場合
・原料、紡績はあきらめて頂いて、、、
・既存の糸をオリジナル染色する場合は「糸の染色ロット」で、1色10kg=300双前後〜。
・すでに染まっている糸(既存色)を使用する場合は「編立ロット」で、1色100双前後〜。
③靴下(丸編み)の場合
・原料、紡績はあきらめて頂いて、、、
・既存の糸をオリジナル染色する場合は「糸の染色ロット」で、1色10kg=300足前後〜。
・すでに染まっている糸(既存色)を使用する場合は「小寸丸編みの編立ロット」で、1色300足前後〜。
④肌着類(丸編み)の場合
・原料、紡績はあきらめて頂いて、、、
・糸種の選定や編み設計の変更からの場合は「丸編みの編立ロット」で、10反〜。
・すでにある生地をオリジナル染色する場合は「染色ロット」で、3反、6反〜。
・すでに染まっている生地のサイズや縫製仕様を変更する場合は「縫製ロット」で、100点、300点〜。
のような、対応数量イメージとなります。
※具体的な商品イメージにつきましては、ECサイト:京都西陣の絹糸屋さん・中村忠三郎商店でご参照ください(宣伝です。。。)