シルクの基本講座 vol.001 基本の織り組織 平織・ツイル・サテン ~拡大写真あれやこれや~
おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。
さて、本日はシルクの織り組織・織生地についてのお話です。※シルクの「編み組織・編み生地」についてはこちら。
今回は、基本の織り組織である、
1:平織
2:綾織、ツイル
3:朱子織、サテン
について、実際の織生地の拡大写真をご覧いただきながら、それぞれの特徴や違い、よく使用される生地の呼び名などもあわせて紹介いたします。
この「シルクの基本講座シリーズ」は、シルクを正しく・公平に・できるだけ客観的に理解していただくことを目的としております。
余計な優良訴求や優劣を比較するような記述は極力避け、客観的・物理的・標準的な記述で構成するよう努めてまいります。
※なお、シルクの正しい理解を広げる目的、深める目的で活用したいとのご趣旨であれば、このページ内の画像はDL・転載可です。当店へご一報いただき、引用記載「※京都西陣・中村忠三郎商店より」の注釈記載をお願いいたします。
1:平織 Plane (きほんの「き」 The 織物)
上記はすべて「平織生地」の織り組織を拡大した画像です。(さすがに基本。さまざまなバリエーションがありますね。。。)
糸使いや生地の厚さ、織りの密度などに違いはありますが、経糸(たていと)と緯糸(よこいと)が、1:1で上下・上下・上下、という具合に、すべてきっちりと織りこまれた織り組織になります。
シルク生地の名称としては、平織、羽二重、ちりめん(縮緬)、フラットクレープ、タフタ、デシン、シフォン、楊柳、ジョーゼット、シャンタン、ローン、オーガンジー、ガーゼなどが代表的なものになります。
綿やウール(毛)など他素材の生地であれば、ブロード、金巾(かなきん)、ポプリン、ギンガム、ポーラ、モスリンなどの生地名称があります。
一般的な用途としては、
・薄地のもの:スカーフ、ストール、装飾。
・通常のもの:胴裏、裏地、ブラウス。
・厚地のもの:寝具、ドレス。
などに使用されます。
基本中の基本ながら、多様な変化が可能なオールラウンドプレーヤーといったところでしょうか。
2:綾織 Twill (生地に斜めの綾目が入ります)
上記はすべて「綾織(ツイル)生地」の織り組織を拡大した画像です。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を、2:1で上上下・上上下・上上下(上3:下1や、上1:下2などもあります)という具合に、規則的に飛ばして織る組織です。
平織に比べると、糸が浮いているため滑らかで伸縮性のある生地になります。
シルク生地の場合、生地厚が違うぐらいの差でバリエーションが少なく、特徴のつかみやすい織り方です。シルク生地の名称としては、綾織、ツイルの2つで十分です。
綿やウール(毛)など他素材の生地であれば、デニム、ジーンズ、ドリル、サージなどの生地名称があります。
一般的な用途としては、
・薄地、通常のもの:スカーフ、ストール、チーフ、バンダナ。
・厚地のもの:寝具、ネクタイ。
などに使用されます。
エルメスのスカーフが有名で、糸密度を入れ込んでの厚地の生地も製織できます。
3:朱子織 Satin (YES!シルクサテン)
上記はすべて「朱子織(サテン)生地」の織り組織を拡大した画像です。
経糸(たていと)と緯糸(よこいと)を、4:1や7:1のように設定し、綾織よりも経糸を長めに浮かせて織る組織です。
糸が浮いている距離が長いため、より滑らかで光沢感のある生地感になります。
綾織と同じく、生地の厚み(匁違い)以外でのバリエーションは少なく、生地の名称としては、朱子織、サテンの2つで十分です。和装・着物関係でしたら、綸子(りんず)、緞子(どんす)などの名称の織生地もあります。
綿やその他の素材生地でも、朱子織は「サテン(綿サテン、コットンサテン、ポリエステルサテン)」「朱子(綿朱子、漢字違いで綿繻子など)」と呼ばれることが多く、別称はあまり聞きません。
一般的な用途としては、
・薄地のもの:ストール、スカーフ。
・通常のもの:ヘアキャップ、マスク、枕カバー。
・厚地のもの:パジャマ、寝具。
などに使用されます。
最後に それぞれ適材適所でのご活用を。
ひとくちに「シルクの織物」「基本の織物」と言っても、糸使いや生地厚などによって、様々な織生地があります。
それぞれに長所・短所、得意・不得意がありますので、「何が何でもシルクサテン!」のようなことではなく、最終商品の企画意図・目的、使用シーンなどに合った生地を、適材適所でご選定・ご活用くださいませ。