シルクの基本講座 vol.002 基本の編み組織 天竺・フライス(リブ)・スムース ~拡大写真あれやこれや~
おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。
さて、本日はシルクの編み組織・編み生地(丸編みニット生地)についてのお話です。※シルクの織り組織・織生地についてはこちら。
今回は、基本の編み組織である、
1:平編み 天竺(てんじく)編み
2:ゴム編み リブ編み、フライス編み
3:両面編み スムース編み
について、実際の編み生地の拡大写真をご覧いただきながら、よく使用される生地の呼び名などもあわせて紹介いたします。
一般的・標準的な基礎知識として、ご一読いただけますと幸いです。
この「シルクの基本講座シリーズ」は、シルクを正しく・公平に・できるだけ客観的に理解していただくことを目的としております。
余計な優良訴求や優劣を比較するような記述は極力避け、客観的・物理的・標準的な記述で構成するよう努めてまいります。
※なお、シルクの正しい理解を広げる目的、深める目的で活用したいとのご趣旨であれば、このページ内の画像はDL・転載可です。当店へご一報いただき、引用記載「※京都西陣・中村忠三郎商店より」の注釈記載をお願いいたします。
1:天竺編み てんじく jersey ジャージー 平編み plane
上記はすべて「平編み=天竺編み」の編み生地を拡大した画像です。(規則、正しく、美しく。大変わかりやすい編み方ですね。)
一列針床の編み機(いわゆるシングル編み機)でループを同じ方向に引き出して、ウェール方向(編み流し方向)に表・裏・表・裏とシンプルに編み込んでいく編み方です。※編み目のたて方向の列をウェール(wale)、よこ方向の列をコース(course)と言います。
前回、織り組織の際に解説した「平織り」(シルクの基本講座 vol.001 参照)と同じく、シンプルで基本的な構造の編み生地になります。
生地の名称としては、天竺、ジャージー、メリヤス(漢字で書くと「莫大小」です。。。読めると少し偉くなった気分になれます。)などと呼ばれます。
「天竺(てんじく)」は、もともとインド(天竺)から来た「天竺木綿」の生地が平編みだったとかそうでないとか。。。
「ジャージー(= jersey )」は、そもそも「編み生地全般」を指す一般英語名称(本来、リブやスムースなどその他の編み方の生地のことも含む英語)が、なんやかんやで編み方の基本である平編みのものを指すことになったとかならないとか。。。
「メリヤス(莫大小:大小を問うこと莫れ→伸縮性があるから大小問わずフィットします)」は、もともと靴下のことを指すスペイン語の「メディアス」、ポルトガル語の「メイヤス」が変化したと言われているとかいないとか(靴下は丸編み機での製造が多く、靴下=丸編み、丸編み代表=平編み、靴下みたいに編んだもの=メリヤス、みたいなことで、連想ゲーム的な語彙の集約・一般化ですね)。。。
生地の特徴は、
・表裏がわかりやすい(生地表情の違いや、開反生地では、左右の端は裏目側、上下は表目側に生地がまくれる特徴など)。
・使用する糸が同じであれば、基本編み組織のなかでは、最も薄い生地に編みあがる。
という特徴があり、シルクの場合には、生地厚や編み密度などに応じて、肌着・マスク・Tシャツ・パジャマ・寝具・羽織ものなど幅広く使用される編み生地です。
2:リブ編み ゴム編み フライス テレコ rib 畔編み
上記はすべて「ゴム編み=リブ編み」の編み生地を拡大した画像です。(一定の規則性があり、畦が出るのが特徴です。)
二列針床の編み機(いわゆるダブル編み機)で、ウェール方向(編み流し方向)に、表目・裏目・表目・裏目と交互の編み目が繰り返される編み方です。表目1:裏目1で繰り返すのが1×1のリブ(いちいちのリブなどと言います)=フライス生地になります。
より横方向の伸縮が出るように、2×1のリブや、4×2のリブなど、表目と裏目の数を変えて編むと、畦目がよく見え、一般的によく見る「リブ(RIB=あばら骨)」の生地が編みあがります。
生地の名称としては、リブ、フライス、テレコの3つが代表的で、あとは変化数(前述の通り、2×2のリブ、3×3のリブ)で呼ばれたりします。
生地の特徴は、
・基本編み組織の中で、横方向への伸長性が最も高い。
・凹凸がある編み生地で、厚みが出しやすい。
という特徴があり、シルクの場合、フライスは主に肌着、リブ生地は肌着や袖口、裾部分の付属としても使用されます。
3:両面編み スムース smooth interlock インターロック
上記はすべて「両面編み=スムース」の編み生地を拡大した画像です。(ダブルフェイスの真骨頂。両面おもての複雑な変化編みです。)
二列針床の編み機(いわゆるダブル編み機)で、ゴム編みを表裏で2枚重ねて編み合わせた構造の編み組織です。文字で書くと単純そうですが、編み生地を見れば糸が入り組んだ、緻密な編み構造となっています。
表裏それぞれの面の裏目を、反対面の表目で覆うことで、両面とも表目の編み生地になります。その両面おもての平滑さ・滑らかさから、一般的には「スムース smooth」と呼ばれます。
生地の名称としては、スムースの呼称のみで十分です。
生地の特徴は、
・両面おもてのため、生地表面が滑らか。
・両面編みのため、緻密で地厚の生地が編める。
・伸長性が抑えられ、しっかりと安定した生地感。
という特徴があり、シルクの場合、薄地~中厚のものは裏地や肌着、厚地のものはパジャマなどに使用されます。
最後に 毎度同じ結論ですが、適材適所で。
ひとくちに「シルクの編み物」「基本の編み生地」と言っても、編み組織や糸の種類、生地厚などによって、それぞれに特徴が異なります。
それぞれの生地は、あらかじめ存在したものではなく「目的を果たすために新たに開発されたもの」です。その時々の必要性に応じて、その時々の技術者が開発してきたものです。
毎度同じ結びで恐縮ですが、生地ありきではなく、それぞれの長所・短所、得意・不得意を知ったうえで、目的・使用シーンなどに合った生地を、適材適所でご選定・ご活用くださいませ。