シルクの紫外線対策効果、ほんとのところ。絹糸屋が解説。
おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。
さて、本日はシルクの「紫外線対策効果」についてのお話しです。
「シルクには、紫外線防止効果があります!」などの文言がインターネット上でちらほら見受けられますが、本当のところはどうなんでしょうか?!
【目次】
1、シルクの紫外線防止効果はあります!ただし、、、
2、ただし、、、何?
3、ひとくちメモ。「反射」と「吸収」と「カット」と。
今回は、そんな「シルク」と「紫外線」の関係について、京都西陣絹糸屋の番頭・TES(繊維製品品質管理士)が、実際のデータに基づいて解説いたします。
1、結論:シルクの紫外線防止効果はあります!ただし、、、
結論からいいますと、シルクには紫外線防止効果があります。もう少し正確に書きますと「シルクの組成であるアミノ酸結合のたんぱく質繊維が、あなたのお肌の代わりに紫外線を吸収して変質することで、お肌への紫外線透過を防ぐ効果があります」という結論になります。
検査データそのものを公開することはできないのですが(検査機関の著作権の問題:ご希望がございましたら開示提供いたします)、当店生地・製品を検査した結果、紫外線遮蔽率は下記の数値となっております。
・絹紡天竺ニット生地【開発番号1001(KURONUSHI)】生成り:77.1% ブラック:88.3%
・絹紡フライスニット生地【開発番号401(HENJO)】生成り:85.3% ブラック:94.3%
・シルク生糸天竺ニット生地【生地品番:HA1003】ブラック:87.9%
・けんぼうシルクのお休み手袋【『朝がうれしい。』お休みシルク手袋】 生成り:92.1% ブラック:95.4%
上記の数値の通り、生地厚や色目によりますが最小77%・最大95%の紫外線遮蔽率となります。UV反射などの特別な加工をしていない、未加工のプレーンな状態のシルクの実力です。
2、ただし、、、何?
上記の数値データからもお分かりの通り、色や生地の厚み、商品の作り方などの違いにより、紫外線遮蔽率(カット率)は様々です。
当店では、比較用に綿(コットン)のデータなども保有しておりますが、これらも同様に、色や厚み、生産方法などによって数値はバラバラです。
素材に関わらず、一般に生地厚の厚いほう、色目の黒いほうが遮蔽率は良いデータとなります。生地が厚く黒色の綿生地のほうが、薄地の生成りシルク生地よりも遮蔽率が高いというデータもあります。
あくまで同じ条件下で比較した場合であれば、シルクに優位性がみられるというのが正確です。
シルクであればなんでも紫外線を吸収・透過防止するということにはなりませんので、表記や商品説明を見る際には注意が必要です。
とりわけ、データの裏付け・遮蔽率%の表記の無い一般的表現や概要表記(シルクは紫外線を吸収します、シルクは天然の紫外線カット繊維です、シルクには紫外線対策効果があると言われています、などなど)は鵜呑みにせず、個別商品のデータに基づいてご判断ください。
3、ひとくちメモ。紫外線反射と吸収とカットと。
ここからは余談になりますが、紫外線の透過(肌への到達)を防ぐ方法としては、大きく分けて「反射」と「吸収」の2パターンがあります。
市販品で「UVカット率98%!99%!」などを訴求している、綿やポリエステルの商品については、おおむね生地の段階で紫外線を「反射(reflection)」する加工を施してあるものを使用しています。こちらについては、文字通り紫外線を反射(跳ね返す)ことによって、肌への透過を防いでいます。
化学的に跳ね返す加工をしているため、98%や99%などの上限近くの数値が出ます。
もう一方の「吸収(Absorption)」については、生地を構成している繊維のなかに紫外線を吸収することによって、肌への透過を防止しています。シルク(絹)の紫外線透過防止効果は、こちらの「吸収」の作用によるもので、自然の作用のため限界値もあります。
これら2パターンの作用の両方とも、紫外線透過防止効果=紫外線の「カット」効果、と表現しているため、効果数値がばらついて見えるのですが、もともとの原理・作用が異なるため効果数値も異なります。
どちらが良い、悪いではないため、特性や原理を理解して、賢く商品を選択してください。