洗濯ネームの表示義務・商品への縫い付けは必要か? 繊維製品品質管理士が解説。
おはようさん(養蚕)どす。京都西陣絹糸問屋・中忠商店のWEB番頭でございます。
さて、本日は「洗濯ネーム(洗濯ラベル)は商品に縫い付ける必要があるの?」というご質問について、TES(繊維製品品質管理士)の立場から解説していきます。
当店でも様々な商品を生産しておりますが、「洗濯ネーム」が縫い付けてあるもの、縫い付けられていないもの、「洗濯ネーム」の代わりに表示ラベルや下げ札、同封の説明書への記載で代用しているものなど、それぞれのアイテムに応じて適正に対応いたしております。
【目次】
1、そもそも「洗濯ネーム」とは?表示されている内容は?
2、「洗濯絵表示」と「品質表示」はどう違うの?
3、商品への縫い付けが「必須」なものと、そうでないもの【一覧表】。
4、今回のまとめ。
上記のような目次に沿って、なぜそれぞれの商品で別々の対応(縫い付けたり、縫い付け以外の方法を選択したり)をしても問題がないのか、関連法規にも触れながらわかりやすく解説いたします。
1:そもそも「洗濯ネーム」とは?
一般的に「洗濯ネーム」とは、「洗濯絵表示」「品質表示」「表示者の名称と連絡先」「その他の表示」が一体となって印字されている、プリントネームのことを指します。これらの要素は、法律的には別々の意味を持つもので、本来は一緒に印字しなくてもよいものなのですが、利便性のため一つのネームに印字されていることが多いです。
・「洗濯絵表示」とは、家庭用品品質表示法(略称:家表法:消費者庁のサイトへ)で表示が義務付けられているもので、家庭洗濯等取扱方法を明示するための「絵記号」のことを指します。(絵表示についての詳細はこちら)
・「品質表示」とは、こちらも家庭用品品質表示法で表示が義務付けられているもので、「繊維の組成(素材・混用率)の表示」と、必要な場合には「はっ水性の表示」のことを指します。
・「表示者の名称と連絡先」とは、文字通り、その表示内容を決定し表示している主体の名称(企業名や個人名)と連絡先(電話番号もしくは住所)のことです。表示内容に疑義や不明な点が発生した際に、どこに連絡すればよいかを明示する必要から、家庭用品品質表示法で表示が義務付けられています。
・「その他の表示」とは、家庭用品品質表示法とは関係ない表示内容で、「原産国表示(不当景品類及び不当表示防止法:景品表示法に定義)」や、法律上の義務付けや定義のない「サイズ表示」「取り扱い上のデメリット文言」「商品の特長を訴求するための文言」「ブランド名やブランドロゴ」などのことを指します。
2:「洗濯絵表示」と「品質表示」はどう違うの?
目次1(そもそも「洗濯ネーム」とは?)で分類した通り、「洗濯絵表示」と「品質表示」はその内容が異なります。
「洗濯絵表示」は、ご家庭での洗濯取り扱い方法と商業クリーニングでの洗濯取り扱い方法を、7項目の「絵型」で表示するものです。表示する目的は、繊維製品の洗濯取り扱い時に、その製品に適さない洗濯方法で洗濯してしまい、商品が損傷したり汚染したりすることを避けることです。
そのため、製品を洗濯する際に、すぐに「洗濯絵表示=洗濯取り扱い方法」がわかることが必要で、家庭用品品質表示法で「表示が義務付けられている繊維製品」については、本体への「絵表示ラベルの縫い付け」もしくは「絵表示のプリント」など、容易に取れない方法での表示が義務付けられています(※)。
※家庭用品品質表示法の法令文言は、「取扱い表示は、直接製品に記載するか、又はラベル(縫い付けラベルなど)に記載します。ラベルは、消費者が簡単に分かる箇所に見やすく、縫い目などに隠れず、かつ、容易に取れない方法で繊維製品にしっかりと取り付けなければなりません。」となっています。
一方、「品質表示」は、その製品の品質を表示するためのもので、「繊維の組成(素材・混用率)」と表示が必要な場合の「はっ水性」を表示するものになります。その製品がどのような素材でできているのか、はっ水性がある場合にはどの程度のレベルなのかを、表示を見た人が正しく認識できることが表示の目的になります。
従って、こちらの「品質表示」は、必ずしも繊維製品本体と密着不可分である必要はなく、法令の文言でも「下げ札でも貼り札でもよいが、見やすい箇所に分かりやすく表示すること。」となっています。
「洗濯絵表示」=本体へのプリントもしくはラベルの縫い付けが必須。
「品質表示」=本体とは別の、下げ札や貼り札などでも、見やすい場所に明示してあれば良い。
と理解いただいて問題ありません。
3:商品への縫い付けが「必須」なものと、そうでないもの【一覧表】。
それでは、「洗濯絵表示=家庭洗濯等取扱方法の表示」が義務付けられている商品とは、どのようなものがあるのでしょうか?
個別具体的な商品名というよりは、大まかな製品分類になりますが、消費者庁の発行する「家庭用品品質表示法ハンドブック」に、わかりやすく表示義務の有無が掲載されています。
以下、同ハンドブックからの抜粋引用となりますが、
【表示義務のあるもの=本体にプリントもしくは表示ラベルの縫い付けが必要なもの】
・コートの一部
・セーター
・シャツ
・ズボン
・ドレス、ホームドレス
・ブラウス
・スカート
・事務服、作業服
・上衣
・子供用オーバーオール、ロンパース
・下着の一部
・寝衣
・羽織、着物の一部
・帽子
・マフラー、スカーフ、ショール
・エプロン、かっぽう着
・毛布
・ひざ掛け
・上掛け
・布団カバー
・敷布
・カーテン
・ベッドスプレッド、毛布カバー、枕カバー
【表示義務のないもの=本体プリントや表示ラベルの縫い付けが不要なもの】
・糸
・織物、ニット生地、レース生地
・コートの一部
・水着
・下着の一部
・羽織、着物の一部
・靴下
・手袋
・帯
・足袋
・ハンカチ
・風呂敷
・ネクタイ
・羽織ひも、帯締め
・床敷物
・布団(本体)
・テーブル掛け
・タオル、手拭い
となります。
ただ、法令内容を詳細に見ていきますと、例えばストールの詳細では、「なお、ラベルを縫い付けることにより、損壊のおそれがある製品については、縫い付けによらず、貼付けや下げ札によることができる。」などの除外条件の文言もあり、詳しい内容や表示ラベルの縫い付けの必要・不要の判断については、慎重な検討と注意が必要です。
4:今回のまとめ
今回は、「洗濯ネーム」の商品への縫い付けが必要かどうかについて、「洗濯ネーム」に表示されている内容を分類した上で、関連法令(主に家庭用品品質表示法)に照らして解説いたしました。
・「洗濯ネーム」の中身は、「洗濯絵表示」「品質表示」「表示者情報」「そのほかの表示」に分類できる。
・法律上、「洗濯絵表示」の表示義務のあるものには、表示ラベル(ネーム)の商品本体への縫い付けが【必要】。
・法律上、「洗濯絵表示」の表示義務のないものには、表示ラベル(ネーム)の商品本体への縫い付けは【不要】。
・「品質表示」については、下げ札や貼り札、同封説明書などでの表示でも可。「表示なし」は法令違反。
上記の情報を参考にしていただければ幸いです。
ただ、最終的な決定・判断の前には、商品への「洗濯ネーム」の縫い付けが必要か不要か、また、その他の表示法令(主に景品表示法、薬機法など)との関連で、表示しようとしている内容が適正・適法かどうかなどについて、信頼できる専門家へご相談されることを推奨いたします。